かつては500人以上の職人が漆をかき、漆の生産が地域の産業として成り立っていた福知山市夜久野町。

いま、この地に新たな形で漆の営みを育てようとする人たちがいる。
NPO法人丹波漆の漆職人・高橋治子さんと山内耕祐さんだ。


漆の生産が盛んだった頃は、漆の木を育てる人、漆を掻く人というように分業が可能だった。
しかし現在では、それぞれの工程を担う人材が不足しており、分業は難しい。

「漆掻きは収穫作業にすぎません。漆の木を植え、育てるという営みがあってこそ、漆をかくことができる。限りある資源を生かすためには、無駄なく良質な漆を採る必要があり、そのためには技術だけでなく、自然との対話、そして地域の人々との関わりが不可欠なんです」と山内さんは語る。
近年では、「うえるかむまつり」という植樹イベントを開催。参加者は漆の話を聞き、実際に苗木を山に植える。
そこには、単なる労働ではなく、育てることの面白さを知ってほしいという願いが込められている。

さらに高橋さんは、漆が地域に根づくためには「多面的な価値」を生むことが大切だと話す。
現在、漆の植栽を通じて、里山の環境を保全する取り組みも始まっている。
たとえば夜久野高原には、珍しい蝶が生息している。その幼虫が食べる「ナラガシワ」という木を漆とともに守り育てることで、植栽地全体の生態系を維持・再生する試みだ。
こうした活動は、昆虫好きな人など、これまで漆に縁のなかった層を巻き込みながら、関わりの輪を広げているという。
「漆を通じて、地域と人と自然を結び直すことができたら」と山内さん。
職人の手仕事は、いま再び、未来の文化を耕している。

NPO法人丹波漆では、こうした活動を応援してくれる賛助会員を募集している。
会員になると、活動レポートやイベント情報などを通じて、漆の現場とつながることができる。
未来の漆産業を共に育て、自然と人をつなぐ漆の営みに、あなたも参加してみてはどうだろうか。
NPO法人 丹波漆
TEL:090-8972-5062
HP:https://www.tanbaurushi.org/
⚫︎うえるかむまつり
令和7年11月9日(日)
福知山市夜久野町にて
詳細はホームページでご確認ください