天然素材100%のスキンケアブランド「福知山キキョウ」を立ち上げた飯渕弘成さん。
東京出身の彼は音楽一家に生まれ、自身も音楽の道を志していた時期もあったが、縁があったスキンケアメーカーへ就職。
入社1年目はお客様相談室で働き、肌トラブルに悩む人々と向き合う中で、スキンケアの世界にやりがいを見出す。
2年目には大阪支店に異動し、営業職として福知山市三和町の企業とも関わるようになる。ここで福知山との縁が生まれた。

9年目に激務から過労で倒れ退職。自分の人生を見つめ直した。
社会人大学院で経営学を学ぶうちに起業を考えるようになり、個人でスキンケアブランドを立ち上げた。
そんな折、経営学の恩師を通じて福知山市が連携する起業家育成プログラム「NEXT産業創造プログラム」を知り、参加することになった。
転機となったのは、フィールドワークで福知山高校三和分校を訪れた時のこと。
高校生が育てていた桔梗に出会う。福知山ではよく見る花でも、東京出身の飯渕さんにとっては新鮮な存在だった。
調査を進めるうちに、桔梗の根には酸化防止作用があることが分かり、石鹸の劣化を防ぐ可能性に着目。
三和分校の生徒たちと連携し、桔梗の根を使った石鹸づくりが始まった。
無添加で肌に優しい石鹸を目指し、油脂の配合や炊き込み方など製法にこだわり抜き、天然成分100%を実現。

地域らしさと専門性を融合させ、安心して使える製品をつくりあげた。
「せっかくなら販売する経験もしてみないか」と商談への同行を呼びかけると、一人の高校生が手を挙げた。
緊張しながらも台本を頼りに商談をやり切り、なんと取引が成立。
飯渕さんは「高校生だから無理と決めつけるのではなく、挑戦できるステージを整えることが大切」と語る。
現在は隣町の綾部市で新たなスキンケアブランド「しるくのもと」を立ち上げ、大学生とともに桑の葉を使った製品開発にも取り組んでいる。

偶然の出会いから始まった飯渕さんと学生たちの協業は、次世代に新たな選択肢を増やすきっかけとなるだろう。
飯渕弘成〈@〉
東京都杉並区出身。幼少期より野球、ピアノとフルートをはじめ、大学時代には演奏活動にも参加。
自由学園最高学部(大学部)卒業後、スキンケアメーカーに入社。2017年に独立し株式会社Lifexiaを立ち上げ、現在3社の代表を務める。